嘘が嫌いだと言う人は
おそらく嘘をついて傷ついたことのある正しい人
嘘をついて生きてきた人は
おそらく嘘の艶を食べて過食に気づかない滅びゆく人
正しい人も時々には艶を食べ
滅びゆく人も時には正しい人を食す
私にはそれは単なる嗜好のように思えていた
嗜好には流行り廃りが付き物なのだから
しかし私は揺れるようにふとある情景に打たれていた
私の終わりなんて怖くないと呟いた夜だった
現れた天使が何故かやさしく微笑みかけてきたことを
今は単に心証に過ぎないけれど
嗜好を分けて遊んできた一番の嘘つきは
その微笑みの主だった気がしている
譜奏146