2018年10月15日

心にタトゥーが彫れるなら

透明と無色と薄い白色のその結晶を砕いて

私は水溶性の青に変わりながら

そのまま線の中に水棲して

誰にも見られない私でいたいと思っていた

火焔

私の心の始まりの地に

いつからか生まれついた時からなのか

形を変え続ける炎があることに

私は物心がついた頃からはっきりと気がついていた

私自身をも灼くその熱は何のためにあるのだろうと思う

何故か刻んで一つの形にと抗う私に

灰になっても残る

そんな確信だけが赤々と私の地表を揺らし続けていた

 

譜奏285

2018年10月10日

水に棲むピアスの輝きが消えていくように

ビルの夜灯を写していたガラス窓に雨が落ちて

夜に塞がれた時間が黒い煤のように

私を息苦しくさせる時

私が天使のように振る舞えば

その反動の力で悪魔の欲望が深くなり

深くなった欲望は何かを実行したい衝動に苦しむと

天使はしたり顔で囁いてくる

では私は悪魔を振る舞えばいいということなのだろうか

そういう話になる

人はいつも自分の心とせめぎ合いながら生きていく

その暗がりに胞子を落としたような

天使という悪魔という仮装言葉が

私には壊れにくい玩具言葉にしか思えない

 

譜奏283

2018年10月8日

過去から今に線を繋いで未来を警戒して

誰しもが自分を知りたいと希うことを

私は好意的な気持ちを持って同調してきた

私の好奇心の根の触角もずっとそこに向いていたから

その願望は疑いようがない位置にいて

考える余地の凹凸さえ感じることができなかった

何度か思い返してもその率直な実感しか残っていない

しかし自分が呼吸していることが動物のようだと腑に落ちて

今私が考え行動していることのすべてが

知りたい自分から逆線を引いた答なのではないかと思ったら

明らかに私の見当識が動揺して投射影のように

あっさりと実体を放棄していく信号波を出し始めていったのだ

何かの童話に似ていると思った

私はそのお話しの鳥籠にいた名もない鳥だったのだと思った

 

譜奏282