2018年11月2日

カノンコードのリフレインを受け入れる刻

謂れのない絶望を感じていた私の苦痛が

追うように繰り返される甘美なセブンスを

変化のように待っている自分自身の希望に因るものだと

不意に胸に落ちた夜

私は私だけが居ない時でも奏でられ続けてきた音の絵を

破り棄てなければいけないと思い

微熱を感じるOFFボタンに人差し指を立てて

そして動けなくなっていた

ONを示す赤い微光が私のすべての視界を占めて

私自身をも奪っていくように私と目を合わせていた

あなたは絶望のあとに何を得たいのかと問うように

次のセブンスまでの短いフレーズが始まっていた

私は何事もなかったように忘れていた息を吐いていた

 

譜奏293

2018年10月31日

話しかけてこない月に飽きて微睡みに落ちると

灰色に押されるような青い雲が風のように流れて

私はまたいつかの風景画の中に立っている

朝まで終わらない踊り子たちのリズムの性に紛れて

私は私が女でしかないと感じながら

ただその夜を愛するしかない自分に変えられている

しかし月明かりは夜明けまで待つことはなく

私は一度も踊ることもなくて

私は狂って笑うこともなくて

私は愛を感じることもなくて

心の比重に息切れしたようにフェスタから離れていく

そして合図のような小さな草の葉が揺れると

無邪気なカバキーニョに棄てられるような

さびしい加護の歌を聴くことになるのだ

 

譜奏292

2018年10月29日

対外的に生きる部分を暗号化して社会対応し

守るべき自意識の中では素朴な自分を生きる

そんな連携タイプのアプリが誕生したら

きっと世界が大騒ぎになるだろう

私もそれは少し欲しい

しかし反面そんな魔物は明らかな排他の産物でもある

それを空想の中でも欲しがる私が少し残念な気はする

社会はどんどん洗練されてきているのに

そんな社会を創り出そうと希って頑張ってきた人たちがいるのに

一定の成果が上がった今

肝心の人間の何がどう変わってしまったのだろうと思う

確かに歪曲された雑多な雑音が多いのも事実だけれど

やはり自分の意識を強めていけば良いだけのことなのだ

人は人によってすべての熱を得てこうして生きているのだから

 

譜奏291

2018年10月26日

飽き性だから

急いだ恋に失敗したら

右手首の内側に

ト音記号のヘナタトゥーを入れて

消えるまで待って

また次の恋を急ぐだけ

間に合わなきゃいけないの

わたしの恋は飽き性だから

だって真実の恋は運命だから

通り過ぎていったら

もう2度と戻らないのだから

だからわたしのコードは

e♭

セブンスみたいにリフなんかしないの

 

譜奏290