2019年5月8日

風に吹かれて

何かを待ちわびたような二人の

祈りの形

砂の薔薇の花

あした占う東の空に伝えて

翔ぶ鳥よ

揺れる涙で

サヨナラと書いて

もう戻れないとわかっているから

希いは虚しく

麻の糸では繋げないことを

束の間に

儚く宙に舞って

なくなっていくだけなのに

 

譜奏373

2019年5月6日

淋しげな細い雨

私の傘に

言葉のように落ちて

セピア色の悲しい映画のように

一瞬の過去になっていく

南に歩いていけば

潮騒が聴こえてくるはずと

私の中のカモメがまた

私に嘘をつく夜

錆びついた古い鍵の形が

ゆっくり冷めていく珈琲のように

曖昧な苦さで

私の胸に流れていくの

ただ灼かれてしまうほどに

 

譜奏372

2019年5月3日

雨降りの中赤い傘さして

一人で誰の帰りを待つの

白いリボンのぬいぐるみ

苦しみぬいた青春の日々

取り残されて雑踏の中

叫んでいたの

私には生きる何があると

海にかかる虹

瞳のまん中で飾った嘘

私知ってたの

明日を信じてもう一度

虹を駈けていけるなら

ひとり悲しい時は

砂の貝殻うつ波の手をみつめて

 

譜奏371

2019年5月1日

あてもなく歩いていた

風の冷たい街

にぎやかな笑顔ですれ違う

楽しげな人たち

私のポケットには

独りぽっちの指

気づかれないように

うつむいていたから

いつか大きな海を渡っていく

鳥のように空を飛べたら

どんな悲しみも消えていくよと

遠く響く逃げるような誰かの声

もしも人を信じることに疲れて泣いたら

あなただけを見ていてもいいですか

 

譜奏370