誰にも見られていないと思ったら
自分を嘲けりながら生きていってもそれはそれでそれなりに
サマになっていくの女って
だから衝動を抑えるのは昔から苦手なのよと
彼女は抑揚のない声で言ってから
周りのすべてに興味を失くしたように表情を消すと
つまらなさそうに紫色のネイルチップを撫でだした
この女もそして私も実のところ似たり寄ったりで
歪み方の最後の形が違っただけと私は苦々しく感じていた
生きるということがいつまでたっても解らないことだらけだけれど
そもそも女の人生って
誰かに観られていなければ
一人道化のメイクをして声を出さない
さびしいだけの仮面劇のようだと思った
譜奏413