2019年8月9日

誰にも見られていないと思ったら

自分を嘲けりながら生きていってもそれはそれでそれなりに

サマになっていくの女って

だから衝動を抑えるのは昔から苦手なのよと

彼女は抑揚のない声で言ってから

周りのすべてに興味を失くしたように表情を消すと

つまらなさそうに紫色のネイルチップを撫でだした

この女もそして私も実のところ似たり寄ったりで

歪み方の最後の形が違っただけと私は苦々しく感じていた

生きるということがいつまでたっても解らないことだらけだけれど

そもそも女の人生って

誰かに観られていなければ

一人道化のメイクをして声を出さない

さびしいだけの仮面劇のようだと思った

 

譜奏413

2019年8月7日

見覚えのある本棚の前に座っていたが

それが度々私に訪れる夢の中でのことだということは分かっていた

そして何故私はここに座っているのかも私は囚人のように知っていた

何度も与えられたシチュエーションで引き出しを開けられない私を

家鳴りが威嚇するように奇声を発している

私は昨日の夢の部屋のドアを再度押して幻のような机をみつめた後

今日こそはと思う気持ちで透けた手を引く

そして鍵がかけられていた日記帳の鍵を殺すように壊し

誰にともなく幻のようにでもなく息を飲む

やはり

体液でなぞったような言葉が這う川のように

いや違う

そこには予め決められたと思える異邦の罪文が

望まれない聖別のように整然と並んでいるだけだった

 

譜奏412

2019年8月5日

ただ潮汐に引かれ

私自身が真円になることを願って

私は宙を見上げてきた

私が憎んでいたのは

あなたではなく

私が主星じゃないあなたの

キラキラと光っているように見えた夢だったのかもしれない

地の球花に永遠はなく

ただ青磁色の鎧を纏うだけだから

望んだ情熱に倒れると

その魂さえ

ゴミのように

色を奪われて

燃やされてしまうだけなのだ

 

譜奏411

2019年8月2日

あらゆる事での不公平が人間には課せられている

そこに不満を持って生きても的外れなだけだ

社会では不公平はルールなのだとドライに受け入れた方が良い

何よりも今五体が支障なく動かせているなら

深くしっかり実感して感謝することの方が現実的だ

何故なら根のある感謝こそが人生をより良く運営していくからだ

やや乱暴な断定だけれど

人間が人が人生において出来る最大のことは

たった一つしかないと私は思っている

それは恵みを受ける力

きっとそれだけで良い

私たちは祝福された命を持つ種なのだから

いつかその恵みを受けて芽吹き空に向かい

それぞれの命の花を天に見せつければ良いのだ

 

譜奏410