2017年6月9日

真面目な人は好きなのに

真面目を売りにする人を嫌うようになったのは

その人というより

そんな時間の空間が

息苦しいと感じるようになったせい

私は深く考えず長い間そう思っていた

しかし息苦しさは疎ましさに変わり

疎ましさは言葉では表せない排他心へと偏っていった

心のバランスが危うくなって放置できないと怖れた時

弾けるように私を襲った解放は

私自身にとって最も残酷な

その毒に呼応して

新しい変化を待ち望んでいた

私自身の快楽なのだと実感していた

 

譜奏73

2017年6月7日

花は

散ることで

その命を教える

そして似たプログラムの

人の命の究極は

愛でしかない

しかしそれを言葉に飾ると

蜘蛛の唾液が

空気に触れて糸状になるように

形無いものが

不意に形を得て

人は毒されていくのだ

約束を忘れたアダムとイブの

二番目の罪をなぞるように

 

譜奏72

2017年6月5日

窓を流れる景色など

私には意味がなかった

私が私の欲望を乗せたこの列車の

座席に座っているという

事実以外には

生まれてからこの瞬間まで

私は変わらない祈りを持ち続けてきた

天が訝るほどに

そして今私は私の終着駅へと向かっている

ホームに降りたら私はゆっくり歩き

やさしく息を吐き階段を上るだろう

凛とさせた背を過ぎし日の私に残して

私だけを乗せる終着駅発の

運命の線路を走る列車に乗り換えるために

 

譜奏71

2017年6月2日

人が自由を求める限り

人は嘘をつき続けるというロジックは

反論もある話だけれど

私は受け入れるしかない話だと思っている

嘘の正体は逃亡なのだから

答はその結論にしか向かない

では人につく嘘と自分につく嘘とでは

どちらが苦しいのだろうと思う

しかしこれも答はつまらないくらいに

すぐに判ってしまう

前者は他人

後者は自分

逃亡者に平安は訪れない

自由の鍵は思考の精度にあるということだろう

 

譜奏70