宙から空に落ちていくように
見知らぬ街の遠くから聞こえたカリヨンの音が
風追う旅人の背を反響板のように響かせた夜
私の胸に迷い落ちてきた単音が弾くように私を
その夜そのものを
共鳴の一体にして私の身体に消えていった
私は反射的に魂を屈めて身構える
どんな運命であれ運命など
初見はいつも異物でしかないのだから
夢に引かれるように共鳴は眠りに向かっていく
いつしか櫛歯のようになった私と単音が意識し合うその場所まで
ただ平安に
そして奏でられるようなカリヨンの弾かれた一音を
私は空を破れない風のように聴いていたのだ
譜奏140