2017年11月10日

飾ることがないその人は

水彩画の美しさは水と絵の具は拒み合うものだから

境界線のように最後にその痕を遺すから

人の目には融合して見えるけれど

実はその形はそれぞれの痣なのかもしれないと

汚れた指を見せながらアイスコーヒーを吸っていた

拒み合ってるってちょっと不思議な感じ方ですねと私が聞くと

そうだね、でも美しいものはだいたいそういう韻律を持ってるよと

日向ぼっこをしている猫の鳴き声のように言うのだ

とても新鮮な考え方だなと思ってその韻律ってどういう感じですかと喉まで言葉が出かかった時

私はしゃっくりのように大笑いをしてしまった

猫が大あくびをしたのだ

まるでお気に入りの屋根で半目で寝転がっているように

 

譜奏139