大切にしたい何かをはっきり感じた時
怯える胸に私は手を押し付けた
曖昧さを無くすということは強制的に
確かな覚悟を強制されるという
暗黙のメカニズムが作動する
その実務的な態度の容赦の無さは感じていて面白かった
しかししばらくそうしていると
不思議に怯えがリズムを失って
平安な凪が予め決められていたかのように
私の海に横一線の海平線を引いた
一人の深夜に私は私に手を叩いていた
長く痣のように付き合ってきた私の怯えは
単に女の持つ遺伝子の
悪癖に過ぎないと知ったからだ
譜奏85