春風の悪戯か
大気に漂う死種の気配に顔を背けて
私は以前は異物としか感じなかった私自身の中の
平安という認識の揺れに心を苛つかせていた
訳も兆しもなくただ疑ったのだ
何よりも私は時の退廃を避け
その退屈を嫌ってきた
退廃は退屈を食べそして
蠢くようにその細胞を増殖していく ウィルスそのものなのだからと
しかし私は平安を退廃と結び付けた経過を覚えてはいなかった
苛立ちは一つの結論はまたその経過でしかないという恐れからきているのかも知れない
天声の如く下りてくる人生の示唆を鵜呑みにはできないと
示唆そのものが退廃の中で育つ
ウィルスであるのかも知れないと
私は感じていた
譜奏76