2017年6月14日

気にも留めなかった冬が過ぎた頃

私はいつしか

珈琲を飲む習慣がついている自分に気がついていた

小さな頃は甘い物ばかりを母にねだる子供だったのに

犯人は判っていた

頑なな背で急ぎ足で生きていた私をあざ笑うように

ぼそぼそと

路地の日なたで寝転がっているネコのような不思議が

私の洞に飄々と入り込んできていたからだ

そのネコは胃潰瘍になっているのに

日に何度も喫茶店に入って珈琲を飲みぼそぼそとしゃべる

私が席を立てないことばかりを話して

のろく動いて珈琲の香りを時に同調させて

私がそこにいることさえ気にも留めないように

 

譜奏75