秋が似合う人だった
疑い深いところのある私が子供のように話せる人だった
何よりこんなにキレイに生きてきた人はいないと思える人だった
それなのにその人の訃報を受けた時
私は映画のラストシーンを見終えたような気分でいた
2人で少し酔った夜
その人は白い手ねと言って私の手を中指で撫でて
わたしね40を過ぎて整形してね皮膚が固くなっていてね
ちっとも変えられなかったのと言って
バチが当たったのよと笑った
お母さんの形見の指輪を質屋に売ったお金だったからねとまた笑って
本当に悲しそうにこぼしていた途切れない涙の糸が
風にさらわれた一枚きりの写真のように
ただ切なく愛しい思い出として私の胸に置き去られている
譜奏421