2019年8月28日

秋が似合う人だった

疑い深いところのある私が子供のように話せる人だった

何よりこんなにキレイに生きてきた人はいないと思える人だった

それなのにその人の訃報を受けた時

私は映画のラストシーンを見終えたような気分でいた

2人で少し酔った夜

その人は白い手ねと言って私の手を中指で撫でて

わたしね40を過ぎて整形してね皮膚が固くなっていてね

ちっとも変えられなかったのと言って

バチが当たったのよと笑った

お母さんの形見の指輪を質屋に売ったお金だったからねとまた笑って

本当に悲しそうにこぼしていた途切れない涙の糸が

風にさらわれた一枚きりの写真のように

ただ切なく愛しい思い出として私の胸に置き去られている

 

譜奏421