2019年8月16日

人生の主語を複数形に変えるように何かに委ね

自身の単数さえ無機物なモノとして預けてしまえれば

かつて一度も傷ついたことがないかのごとく

人を愛し続けていけるようになるのかもしれない

晴れやかに生きたい

できる限り人々の役に立って世に用いられて

そして叶うなら美しい記憶に残されて

私はただそう希って生きてきた

しかしその前提の思慮にさらなる分別が必要なのだとしたら

自分を生きるという自分とは誰なのだろうと思う

何かに近づいていくほどに遠ざかるような不毛な不安の中

私は蒼の静寂だけが支配する夜をただ彷徨い歩いて

迫りくる心の死を予感しながら自分が抱きしめていた赤児を

教会の前に捨てた女のような虚ろな淋しさだけを胸に感じていた

 

譜奏416