2018年12月12日

オレンジが上手く剥けなくて

ナイフで横切りにしたら花が咲いたように開いて

私は何だか悲しくて

スプーンでぐりぐりと果肉を潰して

溢れてくる果汁の色をみつめていた

いつかこの色を傷のように思い出すと思いながら

今夜はベランダからキレイな星がたくさん見えていた

私はぼんやりと人の心にはいくつの扉があって

いくつの鍵が必要なのだろうと思いながら

見える星の数を数えようとする誘惑から逃げた

その夜魔女のような髪型をして鏡に写る私の夢を見た

失くした子の写真に本を読んでいる人のように

娼婦のような気分になって歩いている少女のように

その目には何の色も映し出されていなかった

 

譜奏310