あまり好きじゃなかった水玉模様の傘を買った突然の雨の夕方
青信号を渡っていたら急に楽しい気分になってきて
手首を左右に返して雨粒の音と遊ぶように横断歩道を越えて
しばらく歩いた橋の上で立ち止まって
私は雨に打たれている川面に水玉を見せて
傘をクルクルと何度も回してみせた
どんなに丁寧に解り合おうとしても
胸に霧を残したままその霧が雲になって
雨になって落ちてくる人もいれば
少し乱暴に曖昧なワガママを見せても
胸に弾んだリズムの響きが想い出に棲みついて
月のない夜に蛍になって会いにきてくれる人もいる
人間は答のないジグソーパズルなのかもしれないと思ったら
誤って川面に落ちた水玉が思わずフフッと笑ったような気がした
譜奏309