2018年11月5日

冷蔵庫の隅に食べ忘れていた林檎を見つけ

捨てるしかないと思ったけれど

その萎みかたに申し訳なさを覚えて

私は銀のボウルに水を入れてその林檎をやさしく落とした

林檎は水分を失くして痩せていたのだろう

何度落としても沈むことはなかった

私は水道の蛇口を力いっぱいに開いて

水流に迷惑そうに遊ばれるその様子を

たださびしい気分で眺めていた

愛に似てる

私はそう思っているようだった

最初に沈んでくれればよかったのにとも思っていた

愛は何かで相殺することなど出来ないと

知っているはずだったから

 

譜奏294