2018年8月29日

理解を望まない目を開いたまま

私は多くの人と言葉を交わしながら生きてきた

その言葉のほとんどを空疎なものと感じながら

美しく生きることは

私にとっては希いにも満たないあまりにも自然なことだった

だからわたしは悪くないと言った

たとえ交わしてきた言葉は犠牲になると解っていても

それはむしろ誠実なイケニエでしょと言っていた

そして悪くなんかないとまた言ったのに

私は友のようにさえ感じていた黒の漆器を衝動のまま投げ捨てて

時を見失ったように身体を閉じていた

螺鈿の青貝の白い光糸が最後の力のようにあどけなく

わたしを棄てるように細い雨の中でも

強く真っ直ぐ伸びていくのが見えた気がしていた

 

譜奏265