理解を望まない目を開いたまま
私は多くの人と言葉を交わしながら生きてきた
その言葉のほとんどを空疎なものと感じながら
美しく生きることは
私にとっては希いにも満たないあまりにも自然なことだった
だからわたしは悪くないと言った
たとえ交わしてきた言葉は犠牲になると解っていても
それはむしろ誠実なイケニエでしょと言っていた
そして悪くなんかないとまた言ったのに
私は友のようにさえ感じていた黒の漆器を衝動のまま投げ捨てて
時を見失ったように身体を閉じていた
螺鈿の青貝の白い光糸が最後の力のようにあどけなく
わたしを棄てるように細い雨の中でも
強く真っ直ぐ伸びていくのが見えた気がしていた
譜奏265