人の心の森で迷子になったら空を見上げてはいけない
見えない境界線が一瞬にして周りを夜の闇に変えるから
闇は目を凝らすと黒ではなく深い艶のある緑色をしていて
色でもない湖を月光の邪気でその面を蒼に揺らしている
そして下を向くと孤独の使いのように
薄霧が形を変えたような蝶が現れる
本来なら生命を持たない闇と邪気の異間にだけ羽を広げる青い蝶
その色彩さえ危うげにして舞う異端の蝶に心を奪われて
命の時間を影の長さで示しているのを目撃したように
人は悲しみを避けた道で悲しみに遭い
苦しみを避けた道で苦しみに沈み
運命を避けた道でその運命と鉢合わせする
乾燥したノコギリソウをベッドに吊るして
何かの愛が長続きすると信じた罰のように
譜奏241