2018年7月4日

人の心の森で迷子になったら空を見上げてはいけない

見えない境界線が一瞬にして周りを夜の闇に変えるから

闇は目を凝らすと黒ではなく深い艶のある緑色をしていて

色でもない湖を月光の邪気でその面を蒼に揺らしている

そして下を向くと孤独の使いのように

薄霧が形を変えたような蝶が現れる

本来なら生命を持たない闇と邪気の異間にだけ羽を広げる青い蝶

その色彩さえ危うげにして舞う異端の蝶に心を奪われて

命の時間を影の長さで示しているのを目撃したように

人は悲しみを避けた道で悲しみに遭い

苦しみを避けた道で苦しみに沈み

運命を避けた道でその運命と鉢合わせする

乾燥したノコギリソウをベッドに吊るして

何かの愛が長続きすると信じた罰のように

 

譜奏241