2018年3月12日

夜の風を怖がったようなネコが

人を避けて路地に消えていく時に

私の目と鉢合わせになって挑むように見返していた

私の優しさはいつものように表に出ず

その小さな体を案じているのにと思っただけだった

私の心の鏡は何かの意図のように私を曖昧にしか写さない

そのフラストレーションに原罪の無形な気配が膨らむ

人間は天使にも悪魔にもなり切れないなんて軽口を言って

そんな大人好みの光沢をしたファンタジーに飛び込んで

そんなイラストの中の私になって

神さまに一つだけ希いを言えるなら

私の中でいつまでも消えないいくつかの時間に

自由に催眠術をかけることの出来る力をと

今夜私はきっとそう言うだろう

 

譜奏192