首筋に水が落ちた感触の後
目が覚めた私の視界を埋めたのは
夜明けまではまだ遠い深夜の冷気だった
暗い闇にしか見えない一面の黒にも鋭角に繋ぐ目があり
それが鼓動のように動きながら
闇の濃淡を支配していることに気づいてから
私は夜を怖れなくなり
むしろ棲み人となることを望むようになっていった
私と月との関係は
その鼓動から始まっている
こんな風に目覚めた蒼が呼ぶ夜は
私の女性らしさを奪い
向き合う者を弱めようとする感触を無視して
私はその聖水が乾く夜明けを待つことになる
譜奏160