微笑んでいると思っていた都会の夜光が
私を無視し続けている微生物のように思えて
夜が明けると街そのものが鬱蒼とした墓石の群れに見えていた
この中で人は何故せめぎ合うのだろうと心では思っても
それを言葉にするには虚さにあまりにも圧されている自分がいて
私は一度もそのことを音にして唇から出したことはない
昔父が読んでくれた異国の花園の物語の枕声が私の胸の地に疼く
その物語の主人公の少女は愛してやまない陶器の人形を抱いて森に行き
人形は自分が愛したようには愛してくれなかったと嘆き悲しんで
そしてその人形を大きな木の下に埋めて帰ってくることはなかった
そんな物語だった
少女はきっと疑ってしまったのだろうその微笑みを
あるいは愛し過ぎたことでその熱に溺れてしまったのか
今も立ち去れないまま陽に重ねた夜光を追うだけの私のように
譜奏496