星の下で守られて生きていると思っていた頃に
私の名を呼んでいてくれた母の声がどんな声だったのか
思い出せない2月の夜明けの雨
いつか私の声もこんな雨音に忘れられていくのだろうと思ったら
何故かすーっと涙がこぼれ落ちました
過ぎ去るものを慈しんで見送ってきた私の人生は
私自身が主体から過ぎ去ってきたものだったのかも知れない
そんな想いが胸にコトンと固形物のように落ちた気がしていたのです
風を異形にする力が魔力なのだとしたら
私はその魔の力で舟の形を指で書いて乗り人となり
どこからか聞こえ続けてくる何かの音に向かって漕ぎ出したい
差し出すものは何も無いけれどと前置きして
見合うかどうかはあなた次第ですが良ければこの肉体を
このまま川辺に置き去りにしますからと答えて
譜奏490