素面の詩人と小綺麗なバンドマンは信用出来ないと言いながら
彼女は多分堅そうな職業の男性と付き合ったことはなかった
貴女ほど気を抜かない服装をしているヒトはいないよねと
どんな時でもねと私がふわっと言ったら
だってワタシおばさん顔のブスだもんと彼女はケラケラと笑って
だから社会人になった時真っ先にメイクを徹底的にやったのよ
街で親と顔を合わせても親が判らないくらいにねと
ビューラーでしっかり曲げた睫毛の奥のカラーコンを輝かせてみせた
謙遜遊びをしている様子もなく本当に私はこの人は女性らしいと思った
その仕草や振る舞いやそして言葉遣いのトーンが特に羨ましかった
バカね劣等感よ思春期の生々しくて憎たらしいあの絶望的な劣等感
ホントはこんなはずじゃなかったのよと急に静かな声になったから
どうして?と私が聞こうとしたら遮ぎるようにだって貢ぎ物ですよって
言ってるようなものでしょと少女のような顔になって寂しそうに言った
譜奏482