2019年3月11日

家を出たネコが雨に濡れて

小さく振り向く

あの日の私を知っているように

張りもなく胸が渇く夜を

鏡に映して

身体を丸めて

気まぐれにオモチャを抱くように

吐息が静かに落ちていく

投げ出した指の先に何もないの

愛だけがわからないの

私には

水に溶けて哀しそうに滲んだ

一夜だけの自画像

忘れられた習作画

 

譜奏348

2019年3月8日

手を繋ぐ力

離して確かめて

夢の欠片を抱いて眠るように

過ぎていった日々

そうねあの頃は

若くて

ただひたむきで

でも私

きっとわかってた

怖くてただ言えないだけで

変わらないものを

枯れていくことで教える

花のように

愛だけを恐れていたことを

 

譜奏347

2019年3月6日

どんなに悲しい時でも

いつでも笑っていたの

風が過ぎていく音を

ずっと背中でみつめていたの

スクリーンに青い雨

運命のように

打ちつけるけど

私だけは傷つかないで

笑顔だけで

人を愛せるはずと思ったの

真実じゃなく

偽りじゃなく

天使のように

CINEMAのように

 

譜奏346

2019年3月4日

心だけ届かないの

夜は暗いだけでしょ

驚いた鏡の色

割れて泣いた波のよう

過ぎてゆくものは

移ろふと

知っているから

明日の朝海を見るの

風に奪われるように

いつか

私の罪にしなやかに

流れるのなら

最後の言葉は

je l’ aimeとだけ言って

 

譜奏345