2019年3月11日

家を出たネコが雨に濡れて

小さく振り向く

あの日の私を知っているように

張りもなく胸が渇く夜を

鏡に映して

身体を丸めて

気まぐれにオモチャを抱くように

吐息が静かに落ちていく

投げ出した指の先に何もないの

愛だけがわからないの

私には

水に溶けて哀しそうに滲んだ

一夜だけの自画像

忘れられた習作画

 

譜奏348