2019年3月20日

春浅く風が過ぎたら

儚げに罪を手折り

美しいものだけを見て

生きていたかったの

紅をまっすぐ引いて

床に落として

唇が怖れていたの

悲しく

紅筆よ

もう一度

いえもう二度と

心さえ消えても

ほんとうの愛があるなら

名も亡き花にこそ似しと

 

譜奏352

2019年3月18日

じっと膝を抱えて

枯れていくことで命を教える

花を

夢を

みつめてた

さがし続けても

心だけに書ける文字は

みつからない

私が永眠ったら

空をつかんで

雨を凍らせて

月を曇らせてみせて

運命なんて

消してしまえばいいから

 

譜奏351

2019年3月15日

きっと知らないうちに

人を傷つけてきたと

胸が騒ぐ夜

どんなに強がって

心を閉ざしても

破れるように漏れた息が

悲しいノイズのよう

もっともっと

素直に生きていたら

自分の弱さにも

やさしくなれたはずなのに

わかっているのに

どうして汗のように

涙が落ちてくるの

 

譜奏350

2019年3月13日

一夜雨にうたれて

蒼く悲しく滲んだ月に

歌うように別れを

渇いたファドのギターだけなら

愛せるから

夢に写る私の顔が

笑って

壊れていく

水面が揺れるように

時が砂のように過ぎていくのなら

抱きしめて

永遠が赦すはずない

夜の終わりに

セレナーデを歌うように

 

譜奏349