春浅く風が過ぎたら
儚げに罪を手折り
美しいものだけを見て
生きていたかったの
紅をまっすぐ引いて
床に落として
唇が怖れていたの
悲しく
紅筆よ
もう一度
いえもう二度と
心さえ消えても
ほんとうの愛があるなら
名も亡き花にこそ似しと
譜奏352
春浅く風が過ぎたら
儚げに罪を手折り
美しいものだけを見て
生きていたかったの
紅をまっすぐ引いて
床に落として
唇が怖れていたの
悲しく
紅筆よ
もう一度
いえもう二度と
心さえ消えても
ほんとうの愛があるなら
名も亡き花にこそ似しと
譜奏352
じっと膝を抱えて
枯れていくことで命を教える
花を
夢を
みつめてた
さがし続けても
心だけに書ける文字は
みつからない
私が永眠ったら
空をつかんで
雨を凍らせて
月を曇らせてみせて
運命なんて
消してしまえばいいから
譜奏351
きっと知らないうちに
人を傷つけてきたと
胸が騒ぐ夜
どんなに強がって
心を閉ざしても
破れるように漏れた息が
悲しいノイズのよう
もっともっと
素直に生きていたら
自分の弱さにも
やさしくなれたはずなのに
わかっているのに
どうして汗のように
涙が落ちてくるの
譜奏350
一夜雨にうたれて
蒼く悲しく滲んだ月に
歌うように別れを
渇いたファドのギターだけなら
愛せるから
夢に写る私の顔が
笑って
壊れていく
水面が揺れるように
時が砂のように過ぎていくのなら
抱きしめて
永遠が赦すはずない
夜の終わりに
セレナーデを歌うように
譜奏349