2019年8月23日

布に尖った鉄が入って抜けて

色糸が鮮やかな花を咲かせるのがうれしくて

少女だった彼女は取り憑かれたように針を動かしたという

友だちの女の子の誕生日のために描いた絵に水をこぼして

クレヨンが滲んで醜い黒になっていくのを見てから

彼女は大好きだった絵を描かなくなった

色は他の色と混ざると無秩序に濃淡を広げて

悪い虫のような黒い形になっていくことに

彼女は突き放されたような裏切りを感じたという

だって綺麗は失くならないほうが良いでしょ

いつまでも綺麗なままが良いんだから

そう、花が好きなのね、でもどうして今はドレスを縫ってるの?

着るためよ、誕生日に、そしてね、わたし

生きたまま人形になりたいのと少女は言った

 

譜奏419