布に尖った鉄が入って抜けて
色糸が鮮やかな花を咲かせるのがうれしくて
少女だった彼女は取り憑かれたように針を動かしたという
友だちの女の子の誕生日のために描いた絵に水をこぼして
クレヨンが滲んで醜い黒になっていくのを見てから
彼女は大好きだった絵を描かなくなった
色は他の色と混ざると無秩序に濃淡を広げて
悪い虫のような黒い形になっていくことに
彼女は突き放されたような裏切りを感じたという
だって綺麗は失くならないほうが良いでしょ
いつまでも綺麗なままが良いんだから
そう、花が好きなのね、でもどうして今はドレスを縫ってるの?
着るためよ、誕生日に、そしてね、わたし
生きたまま人形になりたいのと少女は言った
譜奏419