2019年7月10日

音の出るドアを開けると黒茶っぽい板が敷いてあって

その上を歩くと何十年も変わっていない古い木の音がして

見慣れた焦げ茶のテーブルと暗い赤の椅子が見えてきて

何故かいつも空いている一番奥の窓際に私は座って

窓から見える痩せた何かの木の先の通りを見ていたりしていた

あの頃の人はもう誰もいない

しかし変わらない濃い珈琲の香りが主のように立ち込めていた

昔はこの場所が好きだった

そして髪形を気にしていたその頃の私が好きだった

熱情だけに魅かれて私は丁寧に生きることを忘れ

多くのことを気にも止めずに走ってきたように思う

でも解っていた

私は振り返ろうとしている訳ではないと

寧ろちゃんと置き去りにしようと決めて此処に来ていると

 

譜奏400