2018年5月21日

動詞を殺して

形容を飾る隠語は

偏愛を示し

不従順を犯した啓示は

導く場所を持たず

予期せぬ道に彷徨う

終える時を追うように

ゆらゆらと誠実に

感じるだけで触れられない

私の

テロメアの炎

あと何本を費やしたら私を

一瞬の蒼白い熱に光らせて

置き去ろうとしているのだろう

 

譜奏222

2018年5月18日

陽の光は見上げる人に未来を思わせて

高価な本を駄目にする

限りそのものが無いから物事に二面性の枠など収まらない

だから何をしても何を思っても良いけれど

嘘だけは死を覚悟してツくようにと

微笑みのように語った後

希望というのは曖昧な味しかしないから

千回盗んで食べても

最後に一回だけ絶望に捕まって

一回だけ死んだらいいことだと言って

寝返りをうって遠い見知らぬ町に行き

名も知らないものを食べ安い無駄な本を読んでいた

昨日では手に入らない

明日には消える私

 

譜奏221

2018年5月16日

ピエロが起こしにくる朝に

消えていく声が誰かを呼ぶ音が聞こえる

渇いた砂風の中で立っていた

裸足のストリートオルガンの少年が見ていたのは

私の視界の中の夢だったのか

それとも夢の出口にいる私を案じていたのか

哀しみのような切なさのような無力な目を

私は負担に感じて逃れてきたような気がする

人が持つそれぞれの原景にはどのような起因があるのだろう

環境というプロセスはどれほどに人を囚えるのだろうか

風の声が私の名を呼んでいるような気がする

何処へ行けと言うのだろうと私は怯えて

また時を裂いて夢の入口を探そうとする

ピエロの木靴の足音に耳を塞ぐように

 

譜奏220

2018年5月14日

ターコイズ色の海に囲まれた森の物語には

生き生きとした動物たちと海の中の魚たちの幸せなお話が

咲き乱れる四季の花々のように描かれていて

私はいつか大人になったらその森で暮らしたいと思いながら

読んでくれる人の膝の上でその声を子守唄にするように

いつも最後まで聞くこともなく眠ってしまっていた

私がその物語の結末を読んだのは

その本のこともすっかり忘れていた引っ越しの朝のことだった

手と目に記憶の息を止められて思っていたのは

おとぎ話には必ず悪魔が登場してくるということだった

帯びたアプリコットの芯が徐々に媚びを緩めて

剥がれていくコンパッションになっていくように

もしかしたら私は知っていたのかもしれない

問い続けると死ぬ星のことを

 

譜奏219