答えを出さない南風が何処かに吹いていったら
私を通り過ぎてしまった旅が続くだけなのにと
私は口を尖らせて名もない方角を遠くに見て
そしていつかきっと風の助けがなくても
私は方角など意にも介さずに歩いて行くのだろうと
南風が過ぎていった方角のあたりに目を泳がせていた
人がその場所にいる理由はそこに居場所があるせいだろう
他に必然的と思える理由は思いつかない
風に乗って落ちてくる種が目に浮かんだ
人の人生の終始とひどく似ていると思った
しかし何かが胸で円を描くようにノイズして
私はある希いを思い出していた
私は私の血で真紅の蘭のような色を作り
そして太陽が届かない場所で咲いていたいと思っていたのだと
譜奏305