路上で歌う若い女性を通り過ぎて
この自由さが今の時代の平和さの一片なのだろうと
私は後ろに下がっていく電子音から離れるように
信号に向かって足早に歩いていた
音楽のリズムの多くは
鎖で片足をつながれた奴隷たちが
海を渡らせてそして進化させてきたものだ
奴隷たちの絶望は歌うしかなかった
今路上に落ちている絶望はその一片を聞くものなのだろうか
不意に揺れることを忘れた陽炎のように信号が変わり
結婚するか修道院に入るかしかなかった時代の女たちが
宵早の門を閉じる姿が滲んだ絵のように見えた気がした
迷い込んだ透過光が哀しむように白く抜けて
そのまま自らの春光を弱めていくように
譜奏225