人には様々な苦しみがある
感情を封じて描かれた雑誌のイラストの細い息のような線を
私は寂しい気持ちで何度か目になぞっていた
その時にふと思った
幸福や満足していそうな表情には
残るものがないのに
何故寂しいものにはテイストのようなものがあるのだろうと
哀しみも同じだ
この線は私にそういう感性みたいなものを伝えている
それらはどれも非建設的で
最後には苦しみにしか行き着かないというのに
善を行なえど罪無き者はなしという聖句が頭をよぎる
生きるということは満たされることを目的にしてはいないのか
そう思えば見事なほどに辻褄が合ってしまう気がして
私は駅のゴミ籠にゴミのように雑誌を投げ捨てた
譜奏167