KI・Z・NA

―――――くじけない やさしさで
永遠の約束 交わしたね

『KI・Z・NA』より

 

弱虫になった私が逃げ込む

いつもの巣穴の温もりに

苛立ちを感じ始めたのは

その温もりが

私を守れないと気がついたせい

それが大人になるということなら

地からの

太陽からの熱は

もう私には

不要と

胸に刃を当てるだけ

その痛み

その傷を

背に携えて

 

譜奏21

2017年2月6日

夢が妊る場所は

心の中のどこかの扉と

信じ込んで

やさしくノックして

強く叩いて

最後は身体をぶつけた

人間という点描は

その根に

ナルシスの微毒を

必要としているのかもしれない

俯瞰した視界の絶望の中に

居るはずのない自分が

必ず意識を宿してそのものを

浮き上がらせようとしているのだから

 

譜奏20

2017年2月3日

愛が全てというのは否定できない

誰もケチを付けられない

でも何の全てか

よく識る人はいない

人生のというのが

一番納まりが良い感じ

それと親子

母と子

でもそれも固形物のようになっている

だから愛もその全ても

飾られた時に輝くの

その時だけに輝いてしまうの

舞台で空に広げた手の

老いた役者のように

 

譜奏19

2017年2月1日

水の紋の揺らぎの終に留まる

円の死に

無関心な水面

その湖表に

湖底に棲むように

淡い光を放つ

孤高の濁り月

紡がれていくの

きっとそのように

音も光も

静寂にまとわりつく

惑いのような風も

今私が揺らぎに棄てた

消し言葉の祈りも

 

譜奏18