2017年4月5日

時の堆積の中にいた人と

心が途切れてしまった午後

私は乱れないリズムを打ちながら

初めてのカフェのテーブルに

手を投げ出した

気がつけば爪床が荒れていた

小さな血液を含んだ皮膚が

接しない点画のように

その色を哀しく見せている

生きるって何故

変質を繰り返すのだろうと思った

時を塞いで息をする力を忘れた

私のこの爪が

与えられた示唆であるかのように

 

譜奏45

2017年4月3日

私が呼んでも

何度呼んでも

答えてくれない私が夢の中にいた

私が差し出した手は大きく

彼女の背は小さかった

忘れてきたのと

私は二度言った

一度目は声にならなかったから

白い霧のような風が吹いて

私の手は小さくなり

彼女の唇は紅く濡れていた

今度はその唇が私を呼んだ

なのに私は急いで

小さくした背を向けていた

 

譜奏44

クレヨラ

―――――自分らしく生きるって
―――――自分らしいってなんですか

―――――――――『クレヨラ』より

 

鈍くてもぼんやりしていても

お人好しで

気が弱くても

大人に行き着けば

人は誰しも

色んな事が見えてくるもの

もしかして人は人生は

卑しいメイクをして踊る

孤独なピエロなのだろうかと

ある日不安でピエロに問えば

彼は涼しい口で

悲しみの目で

ただ傲慢であればと

言った気がした

 

譜奏43

2017年3月29日

兆しもなく

私の湖面から流されて

冷やされた海霧が

失くした愛に

繁殖したら

海水は鎮められ

波が狂ったように

宙に引かれ

海は

月まで

流れていくの

青い涙の

人魚の祈りを

叶えるように

 

譜奏42