飾ることがないその人は
水彩画の美しさは水と絵の具は拒み合うものだから
境界線のように最後にその痕を遺すから
人の目には融合して見えるけれど
実はその形はそれぞれの痣なのかもしれないと
汚れた指を見せながらアイスコーヒーを吸っていた
拒み合ってるってちょっと不思議な感じ方ですねと私が聞くと
そうだね、でも美しいものはだいたいそういう韻律を持ってるよと
日向ぼっこをしている猫の鳴き声のように言うのだ
とても新鮮な考え方だなと思ってその韻律ってどういう感じですかと喉まで言葉が出かかった時
私はしゃっくりのように大笑いをしてしまった
猫が大あくびをしたのだ
まるでお気に入りの屋根で半目で寝転がっているように
譜奏139