オモチャのような手動の時計を買って
針をグルグル回して時間を壊して
私は知らないカフェで何も考えない私になろうとしていた
どうして人の感情はスイッチボタンを押すように
切り替えることが出来ないのだろう
人生で起こる出来事は概ね思わせぶりだ
カップを持とうとした時に目に入った不誠実な時間を
私はそんな気持ちでまた右に左に何度も回し続けた
少しの意思も入らないように瞼をしっかりと閉じて
私の指は細くて小さな小動物のようだ
この手で何かを成すことがあるのだろうか
鼓動が揺れて揺れたまま熱を持って
見つけられない何かを探す迷い火のようになって
また私はそんなことをいつの間にか考え始めていた
譜奏214