私の記憶の中でしなやかな身体を持ち
透明な笑顔を首筋に表していた青年が
萎んだような頬を隠さず私とすれ違った駅を
寂しい想い出を見送るように
私は振り返ったまま見つめていた
歩き出しても心が動けない苦痛を胸に
タイル貼りの歩道を強く蹴り
挑むように出口に向かうと
車の喧騒が襲うように私に迫ってきていた
美しいと思える物はやがて枯れ
透明なものは季節が終わるように濁っていく
そんなつまらないフレーズが私を捕らえる
その声が彼の声のように聞こえて私は振り返り
細くどこまでも続いていそうな階段をただじっと見つめていた
譜奏208