平均律を弾く時にダンパーを踏むと
フォルテにオクターブの連打をしても
出てくる音は消えているはずの柔らかさに削がれ
途切れた韻律しか遺さない
それが楽章の頭から弾けない理由になり
コーダからを繰り返す頑なさを生み出す
指は暗譜した鍵を追っているように
その1音を置き去りにしているとも見えるように
離れては叩く不毛の漂いの中を過ぎていく
終章にはリテヌートだけが待っている
肩を開いて全ての休符を潰して続く3連符が
光の静寂音に聞こえてくるまでに繋ぎ続けることができたらと
私はその1音の輝きの粒の無機なる闇に
目を凝らそうとするほどにただ取り憑かれていた
譜奏243