2018年7月9日

平均律を弾く時にダンパーを踏むと

フォルテにオクターブの連打をしても

出てくる音は消えているはずの柔らかさに削がれ

途切れた韻律しか遺さない

それが楽章の頭から弾けない理由になり

コーダからを繰り返す頑なさを生み出す

指は暗譜した鍵を追っているように

その1音を置き去りにしているとも見えるように

離れては叩く不毛の漂いの中を過ぎていく

終章にはリテヌートだけが待っている

肩を開いて全ての休符を潰して続く3連符が

光の静寂音に聞こえてくるまでに繋ぎ続けることができたらと

私はその1音の輝きの粒の無機なる闇に

目を凝らそうとするほどにただ取り憑かれていた

 

譜奏243