2020年2月19日

微笑んでいると思っていた都会の夜光が

私を無視し続けている微生物のように思えて

夜が明けると街そのものが鬱蒼とした墓石の群れに見えていた

この中で人は何故せめぎ合うのだろうと心では思っても

それを言葉にするには虚さにあまりにも圧されている自分がいて

私は一度もそのことを音にして唇から出したことはない

昔父が読んでくれた異国の花園の物語の枕声が私の胸の地に疼く

その物語の主人公の少女は愛してやまない陶器の人形を抱いて森に行き

人形は自分が愛したようには愛してくれなかったと嘆き悲しんで

そしてその人形を大きな木の下に埋めて帰ってくることはなかった

そんな物語だった

少女はきっと疑ってしまったのだろうその微笑みを

あるいは愛し過ぎたことでその熱に溺れてしまったのか

今も立ち去れないまま陽に重ねた夜光を追うだけの私のように

 

譜奏496