私のことを祈ってくれる人がもう誰もいないのと
彼女は私に言ったあと
父は最低だった、でも私を愛していたのよと付け加えた
穏やかな春の凪のような話し方だった
育ちの良さがその仕草や言葉のトーンを纏っていた
ケンカ別れしている娘に会わせてくれないか、という相談だった
その娘は私の悪友でケンカ別れの原因になっただろう男とも別れている
すでに彼女は自分の死期を悟っているのだろうと私には思えた
睡眠剤に依存して脱け殻のようになっていることも多かったけれど
ある時期私が本当に苦しんでいた時に
まるで舞い降りてきた天使のような柔らかな表情で
女ってね意志だけじゃさみしさに勝てないものなのよ、だから
あなたはね、もっと人生を愛さなきゃだめなのと
やさしく言ってくれた透明な声が夏の陽射しのように忘れられない
譜奏459