2018年4月6日

酒グセが悪く言葉遣いが乱暴な彼女は

50を過ぎて独身で化粧っ気がなく

スカートをはいていることがない

彼女が二十代の頃彼女は優しい微笑みの人だった

多くの人の生死の現場が彼女の丸い頬を削いでいた

一緒に居酒屋にいる時泥酔していると思っていた彼女が

携帯電話が鳴った途端に緊張感のある声で

はい、と言った時の顔を思い出す

そして彼女は店を飛び出していくのだ

死にかけてるまだ10にもならない子が私の手の甲にさ

ありがとうって感じで指文字を書こうとするんだ

口が動かせないからさ、ほんと、弱っちゃうよう

テーブルに顔をつけて涙目で彼女は泣き虫顔になって言う

私は同じ表情でただずっとうなづいている

 

譜奏203