2017年11月8日

満月だと聞いていた夜

急な大雨に降られてタクシーの座席で目を閉じた

吐く息を1として

28数えたところでブレーキの反動を感じる

動き出した気配から71のところで身体が右に振られたあと

今度はウィンドウの方に首を振られる

そしてそのまま

私は冷たいガラスに頭をつけて身体の芯を凭れさせていた

黒い布を目に被せたように私の視界は音だけになっていく

怯えの構図はきっとこのような仕組みで造られていて

色彩さえ与えられていないのだろうと思った

気がつくと数が音に消えている

敬意を払えないと知っている私の一日を

私自身が忘れていくように

 

譜奏138