2020年2月17日

銀のベールのような空の下を若いとは言えない女が歩いていた

砂の沈む音だけが生き物のように聞こえてくる

裸足で感じていてもここが砂漠なのか砂浜なのかは分からなかった

そんな夢を見た秋が過ぎて今私は厚手のコートの襟を立てて歩いている

彷徨っているということでは夢も現実も大差などない

そのリアルな実感が私にはすごく嫌な感触の後遺症になっていた

きっとその内に私はまた砂の面を歩くだけの夢の続きを見るのだろう

行き着く場所が用意されていないと知りながら

何かに無抵抗なままに操られている気がして私は一計を案じて

スケッチブックとクレヨンを買って見たままの絵を描きだした

そして最後に大きな円の湖の面を青で強く引いて塗り潰してみせた

限りのない遥かな砂の面を私は砂漠と感じていたのだ

何に向かってかは分からないまま私は顎を上げて歪んだように笑った

そして最後に美しい少女は水彩で描かなきゃとだけ思っていた

 

譜奏495