冷めたコーヒーにミルクを落とした時
私は久しぶりに時間の観念を持たずに過ごせた時間に感謝していた
ミルクはブロッコリーが早送りで成長していくように見えたり
何かが爆発して炎が広がっていくようにも見えたりした
思えばこの世に形の無い物という物がない
それらは例外なくやがては形を無くしていくというのに
私は小さな頃からそのことに淡い切なさを感じていたように思う
私にとっては言葉も感情も人の死も一つの形のように思えていたから
寒さを感じてそろそろ席を立ってカフェを出ようと思った時
ひょっとしたら私は今自分の夢の中にいるのではという疑いを持った
そしてそれならそれでどちらでも良いとも思っていたのに
私は座り直して祈るように背を丸めて何かにつぶやく素振りをした
幾何学模様の幻覚が私の視界を支配する中で私は思っていたのだ
どうせなら私は鋭角な星型になって叶うのなら光っていれば良いのにと
譜奏480