貧しい生い立ちではなかった
両親も私を普通に愛して育ててくれた
それなりに勉強をしてそれなりの青春を過ごした
しかし私はふと自分が他の誰とも違う人間であることに気がついた
私にはいつしか犯罪への愛が芽生えていたのだ
日々その魅力に引き込まれていく自分が怖くて
私は泥を吐き出すように自分自身が惹かれるディテールを
自分の人生のように現実のように小説として書いたのだ
皮肉にもそのネット小説で今私は時間を切り売りしないで済んでいる
歪んでいるという素朴な実感だけが私を虚ろにさせているというのに
でも私は分かってもいる
私にとって家族は真実の愛ってほどじゃないということを
解決したようにそう思えてしまったら
涙が過ぎてきた時間のように止まらなくなってしまうということを
譜奏452